モバイル回線とは

無線のネット回線は、主に携帯電話(スマートフォン)で使われる通信回線を利用したものですが、ここではその総称としてモバイル回線と言う言葉を使います。モバイルデータ通信などとも呼ばれますので、適宜読み替えて頂ければと思います。

そんなモバイル回線ですが、現在非常に複雑になっています。なじみのない用語や概念が次から次へと登場し、理解する前に次の用語がやって来るような状況ですので、ますます分からなくなるのが現状です。

しかし、裏を返せば、それだけ技術が日進月歩で、多くの企業やユーザーが注目する花形の業界であることの表れでもある訳ですから、十分な知識を身に付けて、遅れずに付いて行きたいものです。

ここでは、携帯電話の通信規格についてと、それらをどう言った形で利用しているかについて解説します。

携帯電話の通信規格

厳密に言うと正しくはないのかもしれませんが、無線の回線の種類の違いとは、携帯電話の通信規格の違いと言うことになります。

3GだとかLTEだとかの言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、これは携帯電話の通信規格に関するものです。しかし、サービス名と通信規格、世代をくくった呼び方が混同されているので、少しまとめてみようと思います。

携帯電話に使われている通信システムのことを移動通信システムと呼び、規格が改まる度に世代の数字も進んで来ました。世代をはっきりさせるために、第X世代移動通信システム(Xには数字が入ります)と呼んでいるのですが、これの略称を世代と言う意味の英単語Generationの頭文字を取って、2G(第2世代)とか3G(第3世代)としているのです。

各世代には、基本となる通信規格があり、それを用いて各社がサービスを提供しています。以下の表をご覧下さい。

キャリア名/世代 2G 3G 3.5G 4G(3.9G)
NTT docomo mova
(PDC)
FOMA
(W-CDMA)
FOMAハイスピード
(HSPA)
Xi
(LTE)
SoftBank SoftBank 2G
(PDC)
SoftBank 3G
(W-CDMA)
3Gハイスピード
(HSPA)
SoftBank 4G LTE
(LTE)
au cdmaOne
(cdmaOne)
CDMA 1x
(CDMA2000 1x MC)
CDMA 1x WIN
(CDMA2000 1x EV-DO)
au 4G LTE
(LTE)
UQコミュニケーションズ UQ WiMAX
(モバイルWiMAX)

表には各世代における各携帯キャリアのサービス名と、カッコ内にはそのサービスで使われている通信規格の名称を記載しました。本当はもっと細かいのですが、ややこしいので分かりやすくしてあります。docomoFOMA(フォーマ)Xi(クロッシィ)は有名ですね。

ご覧の通り、docomoとSoftBankは同じ通信規格を用いていましたが、auの規格は異なりました。しかし、4Gでは3社全てがLTEを用いています。

また、新たな通信規格であるWiMAX(ワイマックス)を携帯電話向けに拡張したモバイルWiMAXもLTEと同じ世代です。

4Gの横のカッコには3.9Gと書かれていますが、実はLTEもWiMAXも3Gの進化版と言った位置付けで、本当の意味での4Gではありません。真の4Gは、LTEの後継であるLTE-AdvancedとWiMAXの後継であるWiMAX2が相当します。ただ、規格を定める団体が3.9Gを4Gと呼んでもよいとしたため、LTEとWiMAXも4Gに含まれることになっているのです。

以上が携帯電話の通信規格の概要ですが、よく目にする3GとLTEは、対等の概念ではないことがお分かり頂けたかと思います。一般的に用いられる3Gとは、第3世代に属する通信規格の総称であり、LTE登場以前の各社の通信サービス全般と言う認識でよいと思います。

SIMカードとMVNO

携帯電話には、SIMカードと呼ばれるICカードが差し込まれています。これは、電話番号など契約者を識別するための情報が記録されたカードで、 おおざっぱに言うと、ある番号に掛けた電話は、その番号が記録されたSIMカードが差された端末(携帯電話)に掛かって来るのです。

これまでの携帯電話は、SIMカードと端末が結び付けられていたため(SIMロック)、この差し替えが簡単には出来ませんでしたが、現在はこのロックを解除したり(SIMロック解除)、そもそもロックが掛かっていなかったり(SIMフリー、SIMロックフリー)と、かなり自由度が高まって来ています。SIMフリーとはつまり、端末自体はデータを管理したり、表示したりする機器に過ぎないため、SIMカードを差し替えて、自分の好きな端末を使えばよいと言う形です。

SIMフリーは海外では一般的でしたが、日本ではSIMフリー端末が入って来るようになるまで、あまり知られていませんでした。SIMロック状態が当たり前で、通信インフラを持つ携帯電話会社以外の通話、通信サービスは考えられなかったのです。

ところで、皆さんはMVNOと言う言葉をご存知でしょうか? これは、Mobile Virtual Network Operatorの頭文字を取ったもので、日本語では仮想移動体通信事業者と訳されます。分かりやすく言うと、携帯電話会社の回線を借りて独自のサービスを提供する事業者を表すものです。

SIMフリーの流れと、MVNOが携帯会社各社よりも安いサービスを提供する流れを受けて、脚光を浴びるようになって来たのが、いわゆる格安SIMです。格安SIMのおかげで、モバイル回線の選択肢が豊富になり、月々の料金を減らすことが出来るようになったのは、我々ユーザーにとって非常に喜ばしいことです。

MVNOがいなければ、安い通信サービスはありえなかったでしょうし、SIMフリーと言う概念がなければ、気軽な通信サービス会社の切り替えと言う考え方もなかったでしょう。

モバイル回線の利用方法

端末にデータ通信が可能なSIMカードを差し込むことで、その端末でモバイル回線が利用可能になる訳ですが、その利用方法は複数存在します。

1つは、最もオーソドックスな形である、携帯電話(スマートフォン)によるネット利用です。携帯電話でウェブサイトを閲覧したり、ネットを介したアプリを使ったりするスタイルです。当たり前すぎて、これ以上言うことがないくらいですね。

そして、もう1つの利用方法は、ネットワークの中継機能、すなわちルーターとして利用するスタイルです。代表的な例にはテザリングモバイルルーターの2通りが挙げられます。

●テザリング

テザリングとは、携帯電話をルーターとして用いることを言います。パソコンと携帯電話を無線(Wi-FiBluetooth) や有線(USB)で繋ぎ(LAN側)、モバイル回線(WAN側)を使ってインターネットにアクセスするやり方です。

ただ、これはあくまでも、携帯電話のみで完結している(携帯のみでサイトの閲覧などのインターネットの利用が可能)ものを、あえて通信の道具として使っていると言う点が重要です。

●モバイルルーター

モバイルルーターとは、モバイル(mobile : 可動性)の言葉通り、持ち運びが可能なルーターと言う意味です。本体サイズはスマートフォンとあまり変わらず、設定用の画面もあるので、見た目的にはスマホと大差ないものも多いです。

しかし、モバイルルーターはいわばスマホのテザリング機能に特化した、ネットワークの中継のみを行う機器ですから、単体ではネットの利用は出来ません。


どちらがよいかは一概には言えません。それぞれのメリット・デメリットは以下のようになるでしょう。

テザリング モバイルルーター
現在使用中の携帯(スマホ)がそのまま使える 機器 ルーターを新規に購入する必要がある
携帯1台でOK 携帯性 携帯とモバイルルーターの計2台を持ち歩く必要がある
1台分でOK 料金 2台分必要
長くはもたない バッテリー 携帯よりずっと長もち
1回線分 容量制限 携帯を含めると2回線分

これが全てではありませんが、ごく一般的な評価を挙げてみました。なお、モバイルルーターの方は、携帯電話(スマホ)を別に持ち、そちらもモバイル回線を契約していることを前提にしていますのでご了承下さい。

さて、全体を見渡した感じでは、大体イメージ通りと言ったところではないでしょうか? テザリングは1台で済むため、安価でかさばらないのがメリットで、モバイルルーターは携帯とは別であるため、バッテリーのもちと容量に分があります。特に、携帯のバッテリー切れはあらゆる意味で致命傷となりかねないので、一番気を付けなければならないポイントとなるでしょう。

また、表にはありませんが、au回線はテザリングと電話の同時利用が出来ない(電話が優先)などの制限や、一般的にはモバイルルーターの方が通信が高速で安定しているなどの特徴もあります。

それから、多くの機種が対応しているテザリングですが、中には未対応の機種も存在します。その場合は、当然テザリング機能は使えません。

そして、重要な注意事項ですが、docomoのキャリア端末にdocomo系の格安SIM(MVNOでdocomoの回線を借りている事業者)の組み合わせだと、機種自体はテザリングに対応していても、テザリングは行えません。使えるようにする方法はあるにはあるのですが、特殊な方法ですので、おすすめ出来ません。

他にもこのようなケースはあるのですが、これ以上深くは触れません。どうしても気になる人は、自分の端末が何らかの制限を受けているかどうか調べておくべきでしょう。

様々な条件や制約があり、一まとめにして言うことが出来ないのがモバイル回線ですが、見方を変えると、ネット環境を細かく設定出来る点はメリットと言えると思います。

ネットワークの仕組みなどの知識があれば、どこにお金が掛かるか、何が快適さをもたらすかなども分かって来るものですから、ネットワークをよく知り、自分にとって必要十分でお得な環境を手に入れましょう!

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