固定回線とは

有線の回線は、一般に固定回線と呼ばれ、使われるケーブルの種類で分類され、それぞれに長所短所などの特徴があります。

無線とは異なり、近所の電柱から回線を引き込むための工事が必要だったり、そのための費用が掛かったり、あるいは立地条件などから回線の引き込み自体が難しかったりなど、最初のハードルが意外と高い場合もあるのですが、一度開通させてしまえば高速な通信を安定して行えますので、やはりインターネットを快適に楽しむためには、固定回線を引くのがベストと言えるでしょう。

そんな固定回線について、詳しく解説して行きます。

回線の種類

現在、固定回線としてよく目にするのは、光ファイバーケーブルを利用した光回線、既存の電話回線を利用したADSL回線、そしてケーブルテレビのデータ送信に使われる光ファイバーケーブルや同軸ケーブルを利用したケーブルテレビ(CATV)回線の3種類でしょう。以下にその特徴をまとめますが、ここではホームタイプ(戸建て向け)を想定しています。マンションタイプ(集合住宅向け)は、特に工事や料金に関してホームタイプと異なる部分が多いので、注意して下さい。

回線の種類 ADSL CATV
ケーブル 光ファイバー 電話回線 光ファイバー
同軸ケーブル
工事 光ファイバーの引き込み 電話回線がなければ引き込み、あれば不要 同軸ケーブルの引き込み
速度 高速(100M~1Gbps) 低速(1M~50Mbps) 中速(1M~300Mbps)
安定性 非常に安定している 距離に弱い 特殊なノイズを拾いやすい
機器 ONU ADSLモデム
スプリッター
ケーブルモデム

●ケーブル・工事

各回線に使われるケーブルと工事についてです。

光回線の場合は、光ファイバーケーブルを近くの電柱から宅内へ回線を引っ張って来る工事が必須となります。

ADSL回線の場合は、固定電話があれば、電話回線がそのまま使えるので工事は不要ですが、固定電話がなければ、回線の引き込み工事が必要になります。

ただし、通常の電話回線(タイプ1)の他に、電話加入権なしのADSL専用回線(タイプ2)を選ぶことも可能です。

CATV回線の場合は、回線網自体は光ファイバーを使うのですが、電柱から宅内への引き込みには同軸ケーブルを使うと言う形態を取ることが多いようです(光ハイブリッド)。

また、工事に関しては、新規にCATVやCATVインターネットを申し込む人はもちろんですが、すでにCATVを利用している人もいくつかの作業を必要とします。

●速度・安定性

まず、通信速度に関しては、ベストエフォート(直訳すると最大の努力)での数値なので、「最速でこれくらい」と言う目安程度に考えて下さい。

表中のMMega(メガ、100万)GGiga(ギガ、10億)を表しています。また、単位はbps(bit per socond : 秒間~ビット)です。

通信速度に幅があるのは、いくつかのプラン、コースがあり、速度ごとに料金が異なるからです。よって、低速や高速はあくまでも回線としての可能性を意味しています。

ADSL回線は、アナログ回線だけあって、距離の影響を大きく受けます。つまり、自宅と収容局(基地局)との距離が遠ければ遠いほど通信速度は低下し、ノイズなどの干渉があると安定性も損なわれます。

CATV回線は、同軸ケーブルが弱点になってしまいます。同軸ケーブル自体はノイズに強い造りなのですが、回線網が流合雑音と言う特殊なノイズを拾いやすい構造になっているため、特に上り方向の通信速度の低下を起こしやすいのです。

また、回線は多くの人で共有するものですが、同じ回線を使う人の数が多かったり、その中にヘビーな使い方をする人がいたりする場合、通信速度に影響が出ることがあります。

CATV回線は、この共有者数を多く見積もっていることがあるため、ピーク時の速度低下がよく聞かれるのです。ただし、CATVは地域性が強いため、一概に言えない部分も大きいですから、自分の地域にあるCATVの状況などを調べるなどした方がよいかもしれません。

なお、光回線は上記のような欠点のない光ファイバーを使うだけあって、高速で安定した通信が可能です。

●機器

各回線はある特殊な装置に接続することでもって、回線の終着駅とするようになっています。この装置が必要な理由は、回線を通るデータ = 信号の変換にあります。

信号の種類はたくさんありますが、それぞれにデジタルアナログの2つの方式があり、一般にコンピュータはデジタルの電気信号でデータを処理します。しかし、固定回線は直接コンピュータが扱える信号を送ることが出来ないため、一度別の信号に変換して送り、届いた先で元に戻すと言う形を取るのです。

光回線に必要なのは、ONU(Optical Network Unit : 光回線終端装置)です。ONUは、光ファイバーを通って来た光信号をコンピュータが扱えるように電気信号に変換するための装置です。このONUからルーターに繋いでLANを構成するのが一般的ですが、ONU自体にルーター機能が備わっているものもあります。

ADSL回線には、スプリッターADSLモデムが必要になります。ADSLは、通常の電話回線(アナログ)の内、音声通話が使っていない周波数帯をデータ通信に使う仕組みですので、ADSL回線の中は両者が混在しているようなものなのです。そこでまずはスプリッターにより、音声信号(電話)とデータ信号(ネット)を分離しなければならないのです。

その後、データ信号はADSLモデムに送られますが、このモデムがアナログ信号をデジタル信号に変換します。また、ONU同様、ルーター機能が内蔵されたモデムもあります。

CATV回線では、ケーブルモデムと呼びますが、ADSL回線におけるADSLモデムと役割は同じようなものです。


さて、この他に気になるのは、月額料金だと思いますが、これは回線の差もないことはないのですが、会社の違いも含めて、プランごとの差(通信速度の差)の方が大きいと言えるでしょう。

目立つ印象としては、ADSL回線はタイプ1(電話共用)とタイプ2(ネット専用)で1000円以上の差が付くこともあること(後者の方が高い)、CATV回線は速度による価格差が比較的大きいことくらいでしょうか。

ただ、各回線で最も通信速度が高速なプランは、大体5000~6000円くらいに設定されているようです。

それからADSL回線について、触れておかなければならないことがあります。それは、ADSL回線は、新規の受付を続々と停止している点です。NTT東西のADSLサービスであるフレッツ・ADSLも、2016年の6月末をもって、新規の受付を終了します。

これは受付の終了ですので、サービス自体は存続します。いつまで続くかは分かりませんが、加入者が相当数減るまでは、サービスの停止は難しいでしょう。ADSLを考えている人は、今の内に加入しなければなりません。

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